黒白黒。黒黒黒。黒で白を挟んで、色を反転させた。少し前まで、放課後のSOS団の部室にはわたし以外、誰も残っていなかった。珍しく、朝比奈さんも古泉くんも有希ちゃんも、あのハルヒでさえも用事があると言い出し、さっさと帰ってしまったのだ。暇だったわたしは机の上に出しっぱなしにしてあったオセロで一人遊んでいると、部室に入ってきたキョンくんが「一人じゃつまんないだろ」と言って参加してくれたことから始まった。一人でチェスをするのとは違い、さすがに、一人でオセロはつまらなかった。どうやっても、どっちかに加勢してしまうから。机を挟んで目の前に座るキョンくんは、オセロ盤を見ながら「あいつらはどうしたんだ?」と聞いたので「みんな、用事があるとかで帰っちゃった、かも」と返事をすると「そうか」とあんまり興味なさそうにキョンくんは言った。 「のクラスは、どんな感じなんだ?」 「んー、たぶん、キョンくんのクラスと変わらないと思うよ。よし5枚取り!」 「!やられた…、古泉は下手なのにお前は上手いんだな」 「理系クラスが全員オセロ下手だとは限らないかもよ?」 わたしがそう言うと、キョンくんが急に黙った。どうしたのだろう、とわたしがキョンくんを見ると、彼は何故かきょんとした顔でこっちを見ていた。「お前、それって口癖か」とキョンくんがわたしに聞いた。口癖?口癖ってあの口癖?わたしに、なにか習慣になるほどよく使っていた言葉はあっただろうか。「その、かも、ってやつ。口癖だろ」とキョンくんが言った。自分の言葉を思い返してみる。確かに、言った覚えはある。けれど、そんなに頻繁に言っていたような気がしなくて、わたしは首を傾げる。「……わたしそんなに言ってた?」とキョンくんに問うと「初めてに会ったときも言ってたぞ」と返された。よくよく思い返してみるが、あまり使った覚えがない。(無意識というやつか…!)かも、か。 「でも、そんなこと初めて言われたよ。癖がある、だなんて」 「そうか?結構分かりやすい癖だと思うけどな」 その言葉を聞いて「………、?」とわたしは首を傾げる。今まで、そんな癖を友達にも家族にさえ、指摘されたことは無かった。それなのに、会ってすぐ間もない彼がわたしの癖をすぐに見抜いてくれた。わたしでさえも気付かない、癖を。もしかして、彼はわたしのことをよく見てくれているのだろうか。それを意識した瞬間に、顔がかあっと熱くなって、頭が沸騰したようにぐらぐらした。彼は人の癖を見抜くのが得意で、それはわたしの考えすぎなのかもしれない。けど、けど。 |