わたしは普通に本を読んで普通に椅子に座っていただけなのに、いつの間にかわたしの人差し指には、割れ目ができていて、そこからは真っ赤な血が滲み出てきていた。まるで知らぬ間にかまいたちが通り過ぎていったようだな。なんて思いながら指を見つめていると、どんどんそれは血の赤でじわりと染まっていった。自分の指から血がこぼれ出てくるというのはあまり見れない光景だったから、思わずまじまじと見てしまったが、時間を置くとなんだか急に痛みが伝わってきた。地味にいたい。

「いた…」
「どうしたんですか?
「大丈夫、指きっただけだよ」
「かして下さい」

ぽたり。骸がわたしの手を掴んだときに、溜まっていた血が床に落ちた。あれはわたしの血で、さっきまではずっと体の中でぐるぐる回ってたのか。そう思うとなんだか変な感じに思えて、わたしは首を傾げる。落ちた血を見ていると、傷口が急に傷んだ。まるで、舐められたような、って「なにやって…!」骸がわたしの指から溢れる血を舐めていた。骸に舐められていると思うとぞわりと背筋に寒気が走ってわたしは体を震わせる。早く離せと言わんばかりに骸を睨むと「消毒です。子供の頃によくやりませんでしたか?」とに抜けぬけとそんなことを言いやがった。あんたの子供時代は多すぎてどのことを言ってるのかも分からないわよ!もういい加減にしろ、とわたしは「そりゃあその頃はやりましたよ!」と言葉を返しつつ骸から逃げようと手を引っ張ってみる。でもやっぱり骸も男だし、無駄に力は強いから全然抜けやしない。

睨んでいると骸は楽しそうにわたしの手をまた舐めた。わたしの真っ赤な血が骸の舌にのって、じわりと溶けていく。その光景にどきりとしたわたしは思わず固唾を呑む。わたしは紙で指を切ってしまって、ただ骸がそれを勝手に舐めているだけなのに、まるでいけないことをしているような気持ちになって、わたしは自分でも体温が高くなっていっているのが分かった。もう血は出ていないのに、骸はわざとらしくわたしの指を絡めとるように舐める。蛇のように鋭い目つきがわたしを射抜いた。その整った顔に見つめられて、ああ、そういえばこいつ顔はよかったんだった、なんてやけに思ってしまう。ゆっくり彼の舌と手が離れて、わたしの指が解放される。もう、血は止まっていた。とりあえず「……ありがとう」と言うと「絆創膏くらい貼っておいたらどうです」と骸がわたしの指を優しく手を包んで、絆創膏を貼ってくれた。少し、曲がっている。(ちょっと不器用なのかな)そのときの彼が、なんというか普通の男の子に思えて、なにを血迷ったのかわたしは「骸ってかっこいいね」と口走ってしまった。その言葉を聞くなり骸は驚いたように目をぱちぱちしてから、真顔でわたしの方を見た。

「…手を出してください」
「なんで」
「そんなことを言ってくれるのならいっそ指を切ってみようかと思いまして」
「ゆっ…!あなた馬鹿ですか!」
「別に馬鹿と言われても構いませんよ。あなたに関しては実際そうですからねクフフ」
「なにこの人気持ち悪い!すいませんかっこいいとか言ったの取り消します」
「それはもう不可能な事ですよ、



純愛ラブストーリー

「それに、こういう純愛も素敵だと思うんです。昼ドラみたいでしょう?」 「こんな歪んだ愛はお断りです!(というかあんた昼ドラなんて見たことあったのかよ!)」

(//080325)