![]() *力強く抱きしめてたなら* 「ああもうバシャーモかわいい!」 楽しそうに、そしてとても嬉しそうには思いっきりバシャーモに抱きついている。当のバシャーモも嬉しそうに笑っている、が。その光景を少し離れたところで見ている僕は、とても胸がもやもやする。どうしてバシャーモなんかに抱きつくんだ。そんな図体のでかい奴のなにが可愛いんだ。心の中じゃそんな悪態ばっか吐いているけど、もちろんそんなこと言えもしないから、溜息だけを吐いてその光景を眺める。そうしていると、の持ちポケモンであるロゼリアが歩いてきて僕の隣に座った。「ロゼー」と愛らしい声で鳴いてロゼリアは笑う。元から細いロゼリアの目が、もっと細くなった。その笑顔を見ているとなんだかロゼリアに慰められているように思えてきて、可笑しくなる。ポケモンよりも我慢弱かったのか、僕は。ロゼリアに笑いながら「意外と、君のほうが大人なのかもしれませんね」と告げるとロゼリアも笑ってはいたが、首をかしげた。 そんな彼を見て僕はまた笑う。そして僕は立ち上がって、足に着いていた土や草を掃いながらたちの方を見ると、まだ楽しそうに二人で遊んでいた。どうやら、一度口にして言ってみないと伝わらないみたいですね。やれやれ、と僕はそのまま二人の方に足を進める。僕に気付いたが「どうしたの、リュウ」と笑顔をこっちに向けた。まだの手はしっかりとバシャーモの腰に回されている。それを確認して、にこりとに微笑みを向けながらその手を掴んでバシャーモから離した。の手をそのまま僕の腰に回して、僕も同様に手を彼女の腰に回す。 「今度からその役目を僕に変えてみませんか?」 力を込めてを抱きしめながらそんなことを言うと、から素っ頓狂な声が聞こえた。僕とは頭一つ分も違うから、ちょうど下を向くとの頭がある。柔らかい髪が僕の顔にさらりと触れて、良い匂いがした。「(今度、彼女にアロマテラピーをしてもらおう)」そうすれば僕からも、君と同じ匂いがするようになるから。 「…どういう意味、というかこれはどういう事かな」 「そのままの意味です。僕と付き合いませんか?」 「、…!本気?」 「ええ、僕も驚いてしまうくらいにね」 僕がそう言とは黙りこんだ。何かを考えているようにも思えて、僕も同じように口を閉じた。 「わたしも、自分でびっくりするくらいリュウが好きなんだって言ったら、信じる?」 |