伝えたい言葉だけを引き算すれば残るのは、

頭の中にあいつの影がちらつく。その理由は俺があいつを想っているからとか恋い焦がれすぎてだとかそんなロマンチックなものではない。(まあ)そういうときもあるかもしれないが少なくとも今は違う。これは心配をしすぎて、あいつのことが頭から離れないだけだ。なに?一緒だって?うるさい、違うと言ったら違う!…お前が俺の立場ならきっと俺と同じ状況になるさ。例えば、俺の、…黒の騎士団にとって大事にしている奴が、物凄くお転婆でじっとしていられない性分だったとする。例えばだ。例えばの話だからな。そして、その性格だからこそそいつはよく怪我をする。それは全て小さいものだったが、俺にとっては大きな心配の種だった。大事な奴なんだ。だから心配で心配でしょうがなかった。あたりまえだろう。だがあいつは俺の胸中を全く知らずに引き所を考えずに表に出るんだ。怪我を、いや、最悪の場合命までも断つことになるかもしれないのにだ!俺の本音としては、現場になんて連れて行きたくない。…アジトで俺の帰りを待っていてほしいんだ。だがそれはあいつが断固拒否した。あいつは頑固だし考えは代えないだろうから、しょうがなく連れているがやはり心配だった。だから俺は、あいつのために最も安全なルートを考えて、嘘を吐いてまでそこを通らせている。…うるさい、これは決して過保護なんかじゃない。それに、 「鈍いな、ルルーシュ」 俺の言葉を遮った凜とした鈴のような声に、俺は目の前にいる偉そうな表情をした女――CCを見た。むしろこれは睨んだに近い。だがこいつは俺の視線なんて最初からなかったかのようにこっちを見もしないで、自分の髪の毛に手を入れてそれを絡ませる。CCの不健康そうな白い手によって緑色の髪がさらりと揺れた。普通の男ならこの仕種を色っぽいと思うのだろうが、俺は違う。こいつと契約したときから、俺はこいつを女だとは思っていない。この女はただの共犯者で、ただの、魔女だ。 「健気じゃないか。戦場でもお前と一緒に居たいだなんて」 「それはゼロに対する忠誠心からだ、俺――ルルーシュにじゃない」 「だから鈍いと言うんだお前は」 CCは初めて俺の方を見たが、すぐに口から伸びたチーズに向き直った。黄色いそれはCCの膝の上にある箱に繋がっている。すっかりピザ臭くなったこの部屋を見て顔をしかめながら「どういう意味だ」俺は未だCCを睨んでいる。だが反応はさっきと全く変わらないままだ。「ルルーシュ。お前は頭は良いが、馬鹿だな」魔女はわらう。

「あの参謀はお前を守りたくて戦場でも一緒に居たいと言い張ったのだろう?」



いらないことば
部屋にノックの音が響いた。

(//080604)