目まぐるしく進化していく電化製品を一つ一つ把握していくのはとても忙しいことだ。この間買ったはずの新型の携帯電話がいつのまにか旧型に成り下がっていたり、今まで主動だったものが自動型になっていたりすることが多々ある。俺は別に機械系統方面に明るいわけでもないが、今、大目玉商品として宣伝されているものくらいは知っている。イレブンが何でも小型したがる特性を真似て、何でも小型化してしまおうという考えが今の流行りらしい。手の平を広げたくらいのサイズだった携帯電話でさえ、手の平に収まってしまうくらい小さくなってしまった。用途によっては使えるのだが、ボタンが小さくて普段には使用しがたい。俺が普段目も向けないようなこんな機械情報の話をしたのには理由がある。何を言いたいのかというと、このメーカー同士の小型化戦争におもいっきり乗せられた奴がいたからだ。それはお祭り好きの会長でもなく、機械いじりが好きなニーナでもない。まさかの、である。俺の彼女でもあり、俺と同じく機械にあんまり詳しくないがどうしてそれに興味をもってしまったのかは分からない。

「はい、チーズ!」

かわいらしい電子音が声のした方から聞こえて、俺は思わずそっちを向く。が生徒会室の一角で、見事に小型化されたデジカメをスザクに向けている所だった。それに困るでもなくスザクが笑って「今日で何回目だい?なんだか僕ばっかり撮られているような気がするんだけど」と言うと「今日はスザクデーなのよ!ちなみに明日が誰の番かは内緒だからね!」とが楽しそうにまたシャッターを押した。

「うわ、不意打ちは酷いな」
「えへへ、スザクの素顔ゲット!」

なんだお前らは。付き合いたてのカップルか?の彼氏は紛れも無く俺だし、断じてスザクなんかじゃない。俺が苛々しながら一人頭の中で文句を言っていると、なんだかスザクとから恋人特有のふんわりとした甘ったるい空間のようなものを感じて、俺はぞくりとした。あああそんな馬鹿な止めろスザクいくらお前でもそれは許さないからな…!がたん、と大きな音を立てて俺が椅子から立ち上がると、和気あいあいと遊んでいた二人が驚いてこっちを見た。何も言わずにの近くまで行って、デジカメを勢いよく奪う。最初は、わけが分からない、といったような表情をしていたも状況を理解すると「ちょ、なにするのルル!」と怒ったように言った。それを言いたいのはこっちだというのに。

「これはしばらく没収だ」
「!どうして!」
「…没収だ」

の大きな瞳を覗き込んで言うと、う、と詰まったような声を出しては黙った。デジカメの電源を落とすとさっきとは違う電子音が鳴って、ふっと画面が真っ暗になる。すっぽり手の平サイズに収まるそれを見て、俺は溜息を吐いた。の手を引いて「、え!?」俺は生徒会室から出る。一瞬空き教室にでも行こうかと思ったが、今の時間は確か全てうまっていたはずだ。しょうがないのでそのまま歩き続けていると学園の中庭が目について、俺たちはそこのベンチに座った。

「……ルル、怒ってるの?」
「怒ってなんかないさ。ただ強いて言えば気に入らないだけだな」
「怒ってるじゃない。…ふうん、気に入らないの?」

はそう言いながら笑顔を零した。俺は対象的にまだ眉を寄せたままだから、なんだか凸凹な絵面だ。そうしているとが、デジカメを持っている俺の手に手を合わせて俺の目を見た。

「ねえルル、一緒に見ない?」
「何をだ」
「アッシュフォード学園スライドショー、かな」

にっこり笑ったにどきりとしながらも、俺は口元をゆるく解いてデジカメの電源を入れた。操作の仕方がよく分からなかったので、デジカメをに渡すとすぐに今まで撮影した写真が表示されていた。最初はの手中にあるデジカメを見ていたのだが、いかんせん小型化されたデジカメは隣から覗くには見づらく、どうしたものかと俺は頭を傾げた。

「ああ、そうだ」
「なに?、っえ、ルル!?」

隣に座っていたの腰を掴んで、俺の足の上に載せる。(…、)(またシャンプー変えたのか)そのまま腰に手を回して、後ろから抱きしめながらスライドショーを見せてもらうことにした。は恥ずかしそうに文句を言っていたが、抵抗するのも面倒になってきたらしく最終的にはその形で落ち着くようになった。そのまま二人仲良く写真を見ていたわけだが、俺はそこであることに気付く。

「…なあ、。気のせいかもしれないが…俺の写真が多くないか?」

さっき撮っていたスザクの間抜け面とかリヴァルの寝顔だとか、他の生徒会のメンバーの写真も確かに多い。だが必ずどこかには俺が写っているし、俺だけしかいない写真ばかりだ。

「だってこれ、わたしのスライドショーだもん。わたしの見てる所ばっかりにシャッター押すのは当然じゃない?」



きれいな瞳の暗殺者
反則だ、と思った。
(//080430)