君に、キスを、
は決意を決めたような顔をして、きゅっと唇を結んでいる。おかしいですね。キスなんて、数えられないほどにしてきたことなのに、は未だに自らそれを解こうとしない。私からすればそれは簡単な行為で、彼女からすればきっとそれは、心臓が握りつぶされるような思い。私にそれを握られながら、彼女の心臓はひどく脈打っているのだろう。それは死の恐怖に対する鼓動なのか、私に対する鼓動なのか。残念ながら、それは私には伝わってこない。まぁどっちにしろ、心臓が脈打つ数は決まっていると言われているのだから、は私といるたびに死期に近付いている。こんな簡単なことで彼女の寿命を縮められるというのは不思議なものだ。(人間はこんなにも脆い)いつかが私より先に死んだとして、私はどう生きるのだろう。もし私がより先に死んでしまっても、彼女はそれからも生きていけるだろう。そういうを私は気に入ったのだから、当たり前なことなのかもしれない、けれど、私はあなたなしでは生きられないのに、あなたは私なしで生きられる。それは私がとても不憫というものではないでしょうか。(そう思いませんか?)一向に温まる気配がない私の手をの頬にあてると、は震えて、目をつぶった。だから私は、一度に全てを与えない。ゆっくり、ゆっくり焦らして、の身体中を全て私が占めてしまうように。それだとまるで彼女が私で出来ているようだ。ああ、けどそれもいいかもしれませんねえ。の右頬を包み込むようにして、少しだけ顔を持ち上げる。私はいま彼女の命を掴んでいる。委ねてられている。

あげない
暖かい彼女の頬にやさしく唇をつけた。それが終ってすぐ、閉じていた目を見開いてはこっちを見た。予想外だとでも言っているようなその顔に、私は嫌味な笑みを浮かべる。「おや、してほしかったんですか?
(//080221 title by 1204)