無愛想だけど、ほんとはやさしい刹那が好き。頼もしくてまるでお兄ちゃんみたいなロックオンが好き。アレルヤの困ったような笑顔が好き。ティエリアが怒った後にだけ見れる申し訳のなさそうな表情が好き。好き。好き。すき。わたしはスメラギさんだってリヒティだってイアンさんだって、みんなみんな好きだ。(これって)(節操なしってやつなのかな)でも、わたしは皆が好きだし、この気持ちは嘘とか偽りじゃない。だって、みんな優しいし、こんなわたしに良くしてくれてる。嫌いになんてなれないじゃないか。そうなると、わたしはトレミー全員に恋をしていることになる。好きは、恋、なんだと昔読んだ本に書いてあった。その当時は深く考えることも出来なくて、好きが恋なら嫌いは何になるのかと思っただけだった。それにしても、難しい。数式でうまく説明できないものはほんとうに難しすぎる。あいつよりも、あの子のほうが優しいから、好き?あの子よりも、あの人のほうが少しだけ好きが上だから、恋?ああ、ほんと好きっていう気持ちが分からない。どこからが好きで、どこからが恋なんだろう。 「好き」 とりあえず口に出してみれば何か分かるかもしれない。そんな馬鹿みたいな発想で、わたしは小さくその言葉を言った。「好きです、好きでした、好きだ…?」ううん。なんか軽いような気がする。相手がいないから、軽いのかな。一人でそれを繰り返していると、食堂室に入ってきたアレルヤが不運にもわたしの愛の言葉を聞いてしまったのか「…何を言っているんだい?」と言って入り口で固まった。やばい。聞かれた。というかこんな所で馬鹿みたいに好き好き言ってたわたしがうかつだったと言うべきなのか。 「…誰もいないよね?」 「いないよ。わたしだけ」 「ああ、なんだ。邪魔しちゃったのかと思った」 「わたしに邪魔されて困るような相手はいませんよ」 「…そっか」 少し微笑みを浮かべて(かわいい)アレルヤはわたしの目の前の席に座った。どうせなら、隣に座ればいいのに。わたしがそう言えばきっと彼はその言葉通り、わたしの隣に座ってくれるだろう。けど、そういうのじゃなくてなんというか(言葉とかなくてもさ)自然に横に座ってほしかったんだと思う。(せっかく二人しかいないんだしさ!)そんなこと言えないからわたしは目の前のアレルヤをじっと見つめた。あの髪の毛ってわざわざセットしてるのかな。いやでも多分アレルヤはそういうことしなさそうだし。例えばあれが寝癖とかだったら、かわいいな。 「あのさ、。なにかあったの?」 「え?なにが?」 「いや、だって…一人で告白してたから」 「告白っていうかなんというか、練習だっけ?」 「僕に聞かれても答えられないよ」 そっか、ごめんね。とアレルヤに返事を返して、とりあえず一人告白ショーの理由をアレルヤに説明をしてみた。真剣な顔で途中に相槌を入れながら話を聞いてくれるアレルヤを見て、好きだと思った。(また節操なしかなこれ)話し終えると、アレルヤは「そうだね、」とまるで考えるような仕草をする。彼が動くたびに揺れる髪の毛を、少し触りたくなった。この人はどうしてこんなに繊細で可愛らしい動きをするんだろう。マッチョなのに。…これは関係ないか。 「僕はのそういう所が可愛らしくて好きだよ」 「(え、なに言ってんの)」 「あと、帰還したときに笑顔で飛びついてくる所とかも好きかな」 「アレルヤ?」 「こういうのは、好きになる理由が必要なんじゃなくて好きになってる心が大事なんだと思うよ」 アレルヤは身を乗り出してテーブルに片手をつきながら、残った手でわたしの頬に触れた。(ちょ)(なにしてるのアレルヤ)頭の中を同じ言葉ばかりがぐるぐる回っている。そのまま固まっていると、アレルヤがわたしの唇にキスをした。 「何か、感じない?」 急になにするんだ。とかアレルヤの唇は少しひんやりした。とかたくさん思うことはあったけど、とりあえずこの胸の高鳴りが初めてだったことは分かる。自分からしたくせに、何故かアレルヤは顔を真っ赤に染めていた。「うまく説明できなくて、ごめんね」とアレルヤは、さっき座っていた目の前の席に腰を下ろす。 「…心臓がうるさい」 「僕も。あはは、一緒だね」 あなたへの恋心 (好きにもたくさんあるらしいけど、憧れとか友情とかそういうんじゃなくて、これが恋人としての好きだと、いいな。) (//080324 title by 1204) |